2005-01-01から1年間の記事一覧

フィリップ・クローデル『灰色の魂』―愛と死

灰色の魂作者: フィリップ・クローデル,高橋啓出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2004/10/22メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (19件) を見る いつだったか、高橋源一郎が『群像』に連載している小説論の中で、近代文学はつき…

冨原眞弓『ムーミンのふたつの顔』

ムーミンのふたつの顔作者: 冨原眞弓出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/26メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る タイトルからはムーミンだけに関する本のように見えるがそうではなく、ムーミンの生みの親トーベ・ヤン…

飛田甲『夏祭りに妖孤は踊れ』

夏祭りに妖狐は踊れ (ファミ通文庫)作者: 飛田甲,謎古ゆき出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2005/04/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (18件) を見る 『幽霊には微笑を、生者には花束を』の続編。倉木涼子という新し…

ジャン・エシュノーズ『ぼくは行くよ』

ぼくは行くよ作者: ジャン・エシュノーズ,青木真紀子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2002/03/26メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る ジャン・エシュノーズはまだまだ日本では知られていないと思うが、本国フランスでは人気の…

ジャン・ヴォートラン『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』

パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない (ロマン・ノワールシリーズ)作者: ジャンヴォートラン,Jean Vautrin,高野優出版社/メーカー: 草思社発売日: 1995/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見る この作品について…

アウシュビッツと嘘

NHKで五回連続放送された、イギリスBBC制作の「アウシュビッツ」を見ていちばん印象に残ったのは、元SS将校としてアウシュビッツに勤務していたグレーニングという老人である。 彼は、自分は単なる組織の部品にすぎなかったとしてホロコーストに関す…

乙一『夏と花火と私の死体』

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)作者: 乙一出版社/メーカー: 集英社発売日: 2000/05/19メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 218回この商品を含むブログ (332件) を見る 八月も後半に入ったが、なぜか「夏だ、花火だ、ホラーだ!」と唐突に思いたったので、…

いちおう買っておけばよかったかも、300円だったし。

某新古書店でめずらしくずいぶん古い本を目にしたので、なんの気なしに手に取ったところ、堀口大學の蔵書印が捺されていたのでびっくりした。結局その本は買わなかったのだけど、あれは本物だったのだろうか。気になるなあ。

パリ郊外というトポス

NHK総合アウシュビッツ(2)「死の工場」を見て フランスにおける反ユダヤ主義の歴史は決して浅いものではない。十四世紀のフィリップ四世以降、幾度かユダヤ人の財産を没収して追放するという王令が出されているし、ペストが蔓延したときに、ユダヤ人が井戸…

『ひぐらしのなく頃に解〜罪滅し編』をプレイしての連想

「仲間」のことを英語で company や companion というが、これらはいずれも文字通りには「パンを共にする」という意味である*1。 漫画版『風の谷のナウシカ』に、戦争と粘菌の災害から逃れてきた土鬼の流浪民に対して、風の谷の使者が「剣とパンのいずれを選…

それは、ほんとうに、「ノベル」とよぶにあたいするのだろうか

選択肢がまったく存在しないビジュアルノベルをプレイしていると、ときおり「これって小説として書いたらどうなるだろう」と思うことがある。 音と画像と文章の三位一体だからこそ、従来の活字だけの小説には表現できないことも可能になる、といわれれば確か…

宗教的高校野球考

高校野球の季節ということで、久しぶりに『タッチ』を読み返してみたところ、あっという間に全巻読んでしまいました。やはり何度読んでもいいものはいいですねえ。 それにしても高校野球というのは一種の民間宗教なのだなあ、などとつまらないことを思ったり…

錬金術とはなにか―マルグリット・ユルスナール『黒の過程』

黒の過程 (ユルスナール・セレクション)作者: ユルスナール,Marguerite Yourcenar,岩崎力出版社/メーカー: 白水社発売日: 2001/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (4件) を見る これは、一六世紀後半のフランドルを舞台にした…

世界陸上のキャスター織田裕二、(珍しく)いいこと言った

男子四百メートルハードルで銅メダルを獲得した為末大選手が、その後のインタビューにおいて、1レーンのカーロンにぎりぎりで競り勝った最後の粘りについて「日本人の」魂だか精神の力じゃないかと言ったところ、織田裕二が「日本人じゃないよ、あなたのだ…

レイモン・クノー『文体練習』

文体練習作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,朝比奈弘治出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 1996/11/01メディア: 単行本購入: 15人 クリック: 532回この商品を含むブログ (146件) を見る レイモン・クノーは一時期シュルレアリスム運動に参加していたが…

世界陸上@初日

しかし「マッハ末続」とか「ミセス・アンビリーバブル」とか「笑顔の爆走娘」とかいうふざけたニックネームはなんとかならないものでしょうか。誰がつけてるんですか、あれは? そういえばTBSは野球中継の解説者にもニックネームを付けていて、それもやっぱ…

米澤穂信『クドリャフカの順番「十文字事件」』

クドリャフカの順番―「十文字」事件作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 126回この商品を含むブログ (262件) を見る 『クドリャフカの順番』で扱われる事件は犯人からある特定の人物に向けられたメ…

デジャ・エクテ(既聴感*1)

あれは2、3年前のことだったでしょうか、来日したジャズ・ピアニスト、レイ・ブライアントのソロ・コンサートを聴きに行きました。私は彼の『Alone at Montreux』を愛聴しているので、期待に胸を弾ませて家を出たことを覚えています。ちなみに、『Alone at…

(本は)背中で語れ!

はてなダイアリーにはキーワードリンクという機能があって、自分の興味ある話題を扱っている日記を探すのに便利なわけだが、これには賛否両論あるようだ。というのも、キーワードを辿って行ったところ、本文の内容とはあまり関係がなかったということが往々…

夏宵一球値千金

昨日の深夜にTBSでニューヨーク・ヤンキース対アナハイム・エンゼルスの中継をやっていたので、もう遅いから寝ようと思いつつも、明日(というか既に今日)は日曜だしまあいいかということで結局最後まで見てしまった。おかげで眠くてしようがない。 私は…

米澤穂信『愚者のエンドロール』

愚者のエンドロール (角川文庫)作者: 米澤穂信,高野音彦,清水厚出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2002/07/31メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 228回この商品を含むブログ (438件) を見る 前作の『氷菓』を読んだときにも思…

福音主義的ジャズ入門

ジャズって聴いてみたいけど、周りに詳しい人もいないし、CDショップに行ってもあまりに量がありすぎてどれを聴けばいいかよくわからない。そんな迷える仔羊を優しくあるいは厳しく導いてくださる奇特な牧者がジャズ界にはたくさん存在するのですが、中で…

マリーズ・コンデ『わたしはティチューバ セイラムの黒人魔女』

わたしはティチューバ―セイラムの黒人魔女 (ウイメンズブックス (20))作者: マリーズコンデ,風呂本惇子,西井のぶ子出版社/メーカー: 新水社発売日: 1998/06/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (6件) を見る 虐げられし者 この…

快感原則の彼岸?

あー今日も疲れた疲れた。さーて麦茶でも一杯やりながら(下戸なんです)昨晩録画しておいたアクエリオンとガン×ソードでも見るかな……って、え? ああっ、録画するのすっかり忘れてたよ! そういえば昨日の深夜はちょうどこのエントリーを書いていた。これはも…

真夏の昼の夢あるいは夢の変質

スカパーで放映していたので、映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を再見した。しかしずいぶん久しぶりなのでキャラの名前すら忘れてしまっていた。この機に漫画も読み返してみようかしら、といってもずっと前に古本屋に売ってしまった気がす…

2005年ドイツGP@ホッケンハイムリンク――詠嘆調で

嗚呼、ライコネン! 神は、ていうかマクラーレンのエンジニアは汝に試練を与え給へり*1。而して二戦連続で掌中の勝利を逃す。やんぬるかな。 佐藤琢磨、我今年に於いて未だ汝の自ら過ちを犯さざるを見る能わず*2。請願わくは汝をして疾くポイント獲得をなさ…

米澤穂信『氷菓』

氷菓 (角川文庫)作者: 米澤穂信,上杉久代,清水厚出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2001/10/28メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 956回この商品を含むブログ (574件) を見る あちこちで面白い面白いといわれていたので、はじめてこの人の本を読んでみたの…

ルパン三世はジャズがお好き

LUPIN THE THIRD「JAZZ」アーティスト: 大野雄二トリオ,大野雄二出版社/メーカー: バップ発売日: 1999/10/21メディア: CD購入: 2人 クリック: 42回この商品を含むブログ (25件) を見る 今日も二時間スペシャルが放映されていたようで、いまだに根強い人気を…

レバニラ vs ニラレバ

_summer をやっていたら「今日はニラレバにしてみました」という台詞が出てきたんですけど、「レバニラ」じゃないんですか? それとも世間一般ではニラレバなのか? いやまあどっちでもいいんですけど、試しにgoogleで検索してみたら「ニラレバ」が1250…

ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』から『孤独な散歩者の夢想』へ――コンフリクトなきコミュニティの夢想

ジャン・ジャック・ルソーについて『レ・ミゼラブル』の青年革命家・アンジョルラスに評してもらえば、「ジャン=ジャックのことをとやかく言うな! あのひとにぼくは敬服してるんだ。なるほど子供は捨てた。だが、そのかわり民衆を養子にしたんだ」(辻昶訳…