読書

書を捨てよ、砂漠を出よう。

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))作者: 高田里惠子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/06/06メディア: 新書購入: 8人 クリック: 222回この商品を含むブログ (139件) を見る 世の中には読むと「いやーな気持ち」になる本がけっこうあって、たとえば「…

ツルゲーネフ『父と子』

父と子 (岩波文庫 赤 608-6)作者: ツルゲーネフ,金子幸彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1960/09/25メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 十九世紀の小説を読んでいると、この作品に限らず、物語が佳境にさしかかったところで…

その女、ヒナギクにつき

デイジー・ミラー (新潮文庫)作者: ヘンリー・ジェイムズ,西川正身出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1957/11/22メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (9件) を見る 表題になっているデイジー・ミラーは、未婚の婦人が男と二人で外出す…

ナショナリズム逍遙

フランスでは、かつてナショナリズムは左翼のシンボルであった。それが、十九世紀末から二十世紀初めにかけて右翼のシンボルと化した。フランス・ナショナリズムは、ジャコバン的共和主義を原動力とする左翼の思想から、反議会制民主主義を志向する右翼のイ…

探偵の力

探偵小説と二〇世紀精神 (キイ・ライブラリー)作者: 笠井潔出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/11/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (23件) を見る 近代の均質化した大量死=大量生が個々の死を詳細に扱う探偵小説形式を生んだという笠井潔の説…

当世大学事情或いは教員奮闘記

学生と読む『三四郎』 (新潮選書)作者: 石原千秋出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/03/16メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (50件) を見る これって、ちゃんと『三四郎』の分析がなされているとはいえ、小説・文学の関連書籍…

くもりガラスを手でふいて、あなた、瞳子が見えますか

マリア様がみてる 23 くもりガラスの向こう側 (コバルト文庫)作者: 今野緒雪,ひびき玲音出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/03/31メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブログ (246件) を見る この巻のサブタイトルを目にして「ルビーの指環」を思…

忙しい日々の合間にこそ殺人について考えよう

どういうわけか、寝る間もないほど忙しいときに限って無性に本が読みたくなる。 確か五木寛之もエッセイの中で忙しいときの読書こそ尊いのだと書いていたが、まさにその通りで、まちがいなく納期までにこの仕事をやり終えなければ路頭に迷うという切羽詰まっ…

テスト、テスト

以下の文章を読み、( )と《 》のそれぞれに当てはまる言葉を答えなさい。 戦後、( )は自ら政治規範を示し、それに反する者を社会的に制裁することで民主主義の浸透を図ってきた。しかし多くの人は、「ポリティカル・コレクトネス」が押しつけられると感…

ドス・パソス『マンハッタン乗換駅』(1925)

いわゆる都市小説というものが、いつごろに起源を持つものなのかはよくわからない。ことによれば、ペトロニウスの『サテュリコン』まで遡ることさえできるのかもしれないが、そこまでいくと、少なくともわれわれが生きる近代以降の都市を描いたものではない…

エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』

フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)作者: エドモンド・ハミルトン,中村融出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2004/04/15メディア: 単行本 クリック: 48回この商品を含むブログ (78件) を見る 「のちにSFの定番となるアイデアの数々を…

オルネラ・ヴォルタ『エリック・サティの郊外』昼間賢訳

エリック・サティの郊外作者: オルネラヴォルタ,Ornella Volta,昼間賢出版社/メーカー: 早美出版社発売日: 2018/01/11メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 私はエリック・サティと聞くとすかさず「三つのジムノペディ」の”ゆっ…

アントワーヌ・ドサン=テグジュペリ『プチ・プランス―新訳 星の王子さま』

プチ・プランス―新訳 星の王子さま作者: アントワーヌ・ドサン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,川上勉,廿樂美登利出版社/メーカー: グラフ社発売日: 2005/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 最近びっくりするくら…

フィリップ・クローデル『リンさんの小さな子』

リンさんの小さな子作者: フィリップクローデル,Philippe Claudel,高橋啓出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2005/09/17メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (58件) を見る 同じ作者の『灰色の魂』も色濃く死に彩られた小説だっ…

古川日出男『LOVE』

LOVE作者: 古川日出男出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2005/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (199件) を見る 一読して「こいつは凄い」、と思った。だがその凄さがどういうものなのかは私の貧弱な言葉ではとても言い表せな…

P・G・ウッドハウス『ジーヴズの事件簿』

ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1)作者: P.G.ウッドハウス,岩永正勝,小山太一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/05/27メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 19回この商品を含むブログ (85件) を見る イギリス上流階級の独身貴族バーティ・ウ…

渡邉恒雄『わが人生記』刊行のお知らせ

今朝の読売新聞の社会面の下のほうに、小さな記事ではあるが「渡辺恒雄本社主筆」の自伝刊行のニュースが掲載されているのを見て、いくら読売とはいえそりゃないだろと思った。せめて日曜の書評欄にでもさりげなく紛れ込ませればいいのに、こう堂々と紙面で…

フランソワ・ボンという人

日本ではほとんど無名だが、フランソワ・ボンというフランスの作家がいる。 優れた小説家であるのはもちろんだが、高校(lycée)生などを対象として文章を書くことを教えるという活動*1を行っていることでも知られる。 彼の教室はいわゆる文章作法ではなく、…

新倉俊一『詩人たちの世紀 西脇順三郎とエズラ・パウンド』

詩人たちの世紀―西脇順三郎とエズラ・パウンド (大人の本棚)作者: 新倉俊一出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2003/05/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (3件) を見る 西脇順三郎とエズラ・パウンドやその周辺の人びとを中…

桜庭一樹『GOSICKs』―少女と人形

GOSICKs ―ゴシックエス・春来たる死神― (富士見ミステリー文庫)作者: 桜庭一樹,武田日向出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2005/07/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 61回この商品を含むブログ (136件) を見る このシリーズを読んでいていつも思うのだ…

ヴィクトル・ユゴー『九十三年』

九十三年 上 (潮文学ライブラリー)作者: ヴィクトル・ユゴー出版社/メーカー: 潮出版社発売日: 2005/03/03メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 22回この商品を含むブログ (6件) を見る九十三年 下 (潮文学ライブラリー)作者: ヴィクトル・ユゴー出版社/メ…

サルトルと出産

やっとこさ読み終えたベルナール・アンリ・レヴィの『サルトルの世紀』に触発されて、サルトルの『実存主義とは何か*1』をひさしぶりに読み返してみた。 内容とは全然関係ないのだが、私の本棚にあるこの本は、ずいぶん前に古本屋で50円という安さにつられ…

エミール・ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』

ボヌール・デ・ダム百貨店―デパートの誕生 (ゾラ・セレクション)作者: エミールゾラ,´Emile Zola,吉田典子出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2004/02/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (8件) を見る それにしても久しぶりだなあ、更新…

シモーヌ・ヴェイユ『自由と社会的抑圧』

自由と社会的抑圧 (岩波文庫)作者: シモーヌ・ヴェイユ,冨原眞弓出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/03/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (49件) を見る ずっと前に読んだ覚えがあるのだが、内容はほとんど忘れていること…

奥泉光『モーダルな事象』

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)作者: 奥泉光出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/07/10メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (94件) を見る 二日がかりで読了。 文藝春秋の『本格ミステリ・マスターズ』シリーズの一冊として…

田代裕彦『平井骸惚此中二有リ』1

平井骸惚此中ニ有リ (富士見ミステリー文庫)作者: 田代裕彦,睦月ムンク出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2004/01/10メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (61件) を見る 時は大正十二年、探偵作家平井骸惚に弟子入り志願する河上太一は、入…

フィリップ・クローデル『灰色の魂』―愛と死

灰色の魂作者: フィリップ・クローデル,高橋啓出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2004/10/22メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (19件) を見る いつだったか、高橋源一郎が『群像』に連載している小説論の中で、近代文学はつき…

冨原眞弓『ムーミンのふたつの顔』

ムーミンのふたつの顔作者: 冨原眞弓出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/26メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る タイトルからはムーミンだけに関する本のように見えるがそうではなく、ムーミンの生みの親トーベ・ヤン…

飛田甲『夏祭りに妖孤は踊れ』

夏祭りに妖狐は踊れ (ファミ通文庫)作者: 飛田甲,謎古ゆき出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2005/04/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (18件) を見る 『幽霊には微笑を、生者には花束を』の続編。倉木涼子という新し…

ジャン・エシュノーズ『ぼくは行くよ』

ぼくは行くよ作者: ジャン・エシュノーズ,青木真紀子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2002/03/26メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る ジャン・エシュノーズはまだまだ日本では知られていないと思うが、本国フランスでは人気の…