夏宵一球値千金

 昨日の深夜にTBSでニューヨーク・ヤンキースアナハイム・エンゼルスの中継をやっていたので、もう遅いから寝ようと思いつつも、明日(というか既に今日)は日曜だしまあいいかということで結局最後まで見てしまった。おかげで眠くてしようがない。
 私はスポーツ中継が好きでよくテレビ観戦するのだけど、それがメジャーリーグのように海外のものであったり、あるいは海外で開催されるスポーツイベントだったりすると、たいていは時差のせいで深夜に放送されるのが困りものである。それも昨夜のように翌日が休日というならともかく、平日の深夜の場合は見ようか見まいかと煩悶することになる。「地球をしばらく止めてくれ ぼくはゆったりスポーツを観たい」*1といったところだろうか。
 といって平日の昼間に中継されてもそれはそれで困る。だいたい、日本でオリンピックが開かれたとして、勤め人や学生はまず昼間の競技を見ることができない。なるほどホスト国は遠来の客人を歓待するのが第一の役目なのだ。そう考えると、時差があるおかげで深夜に中継されるほうがありがたいのかもしれない。
 不思議なもので、少なくとも私にとってスポーツ中継というのは、録画しておいて後で見るとなぜか興が乗らないことおびただしい。たとえ時差や距離によって隔てられていても、テレビモニター上の競技に対するライブ感覚がないと駄目なのだろう。というわけで世界陸上が始まったらやっぱり寝不足になるのだろうな……。
 それはさておき、昨夜の試合でいちばん印象に残ったプレーは、われらが松井秀喜ではなくアレックス・ロドリゲスの守備であった。日本の三塁手ならおそらく誰が捕っても内野安打になるだろうと思われる、三塁ラインぎわ深くに転がったゴロをもの凄い送球でアウトにしたのにはまったく唸らされた。彼の送球は肉眼で見る限りまったく弓なりになることなく、まるでレーザービーコンのように真っ直ぐかつ素早く一塁手のミットに吸い込まれてゆく。これを見ただけで試合の勝ち負けなどどうでもいいと思わせてくれるプレーだった。ヤンキースに移籍したてのころはだいぶ守備でポカをやらかしたようだが、今ではすっかり三塁手が板についてきた。さすがはメジャーリーグの超一流プレーヤー、あの高額年俸は伊達ではない*2
 翻って日本では、内野手というともっぱらフィールディングの巧拙ばかりが問題にされるが、新庄レベルの肩の強さを持つ選手に内野を守らせても面白いのではないか。しかし外野にもそれほど強肩選手が揃っているというわけではないから、無理な話なのかも。

*1:寺山修司『地球をしばらく止めてくれ ぼくはゆっくり映画を観たい』

*2:とはいってもさすがにちょっと高すぎるんじゃないのとは思うけど。