Fate/hollow ataraxia

Fate/hollow ataraxia 初回版(DVD-ROM)

Fate/hollow ataraxia 初回版(DVD-ROM)

 本来的には制作側にとっても享受する側にとってもクリティカル(危機的=批評的)たりえていたもかかわらず、すでにあるジャンル内で一定の位置を占める紋切り型として定位してしまったためにその訴求力を失いつつある構成やテーマとその受容の作法を、細緻な技巧を用いてディスタンクティブに修飾しつつも根源的な部分には直接切り結ぶことなく反復的に踏襲することにより、反省的な相貌を纏ったベールとは裏腹に、その下では両者が馴れ合いの眼差しを交わしあうだけの事態を招来してしまうということを典型的に表している作品。なまじクオリティが高いだけにかえってたちが悪い。とはいえ、うるさいことを言わなければ傑作であることを認めるのに吝かではなく、むしろ問題は、製作者のあざとさよりも一にかかってプレイヤー(というか、オレ個人)の鈍重さに求められるべきなのかもしれない。
 ……とまあ自分でもなにを言っているのかよくわからないが、なにを言っても核心的なネタバレになりそうなのでこういう文章になった*1。もちろんこれは、ある種の偽-批評的言辞の、パロディですらない退屈な模倣=反復でしかなく、つまるところオレの鈍重さを表しているだけのことだ。

*1:それでもそこはかとなくネタバレしている気もする。