たまにはシャンソンでも聴いてみよう(植草甚一風に)

「詩人の魂」

Longtemps, longtemps, longtemps
Après que les poètes ont disparu
Leurs chansons courent encore dans les rues
La foule les chante un peu distraite
En ignorant le nom de l'auteur
Sans savoir pour qui battait leur cœur
Parfois on change un mot, une phrase
Et quand on est à court d'idées
On fait la la la la la la
La la la la la la

作詞作曲 シャルル・トレネ Paroles et Musique: Charles Trnet 1951

ずっと、ずっと、ずっと後
詩人たちがいなくなってからも
彼らの歌は巷に流れる
群衆はなんの気なしに歌う
作者の名前には興味もなく
誰が彼らの胸をうつのか知らずに
ときおり人々は単語や文を変えてしまう
アイディアが詰まったときには
こんなふうにして……ララララララ
ララララララ
(拙訳)

 きのう不愉快な形でフランス語の話題をとりあげたので、今日はシャンソンの話などを。
 この「詩人の魂」はシャルル・トレネが作詞作曲したもので、彼も自作自演*1していますが私はイヴ・モンタンのバージョンがいちばん好きです。ジュリエット・グレコも独特の味わいがあって捨てがたいですが。
 作者の名前は忘れられても歌だけは残って歌い継がれる、それも歌詞を適当に変えられて……ある意味詩人や作家にとって最高の名誉かもしれません。数多くあるシャンソンの中でも私のいちばん好きな歌詞です。
 それにしても、いつから「歌手」が「アーティスト」になり、「歌」は「作品」になってしまったのでしょうか。昔は誰が作ったものでも色々な人が歌って、それぞれの個性の違いを楽しめたものですが、今ではいちいち「カバーする」とか「レスペクトする」などと言わなければ他人の歌が歌えなくなってしまいました。もちろんそれによって作詞者や作曲者の地位や権利が上がったことはたしかですが、スタンダード・ソングが姿を消すことにもなってしまいました。少し寂しくもあります。

*1:いつごろからこの言葉はネット上でネガティブな使い方をされるようになったのだろうか。